カナダ子会社を通じて米国進出する前に知っておきたいFADルール

はじめに

カナダに子会社を保有している日本企業が、そのカナダ法人を通じて米国など第三国へ進出する場合、FAD(Foreign Affiliate Dumping=外国子会社ダンピング)ルールは重要な検討項目となる。

この投稿ではFADルールの基本的な考え方や、実務上よく論点となるPUC減額選択、PLOI、事業活動例外などについて概説する。

なお、本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別案件に対する税務・法務アドバイスではない。実際に外国子会社への出資や融資、グループ再編等を検討する際には必ず弁護士、会計士、税務顧問といった専門家に相談のうえ判断してほしい。

FADルールが適用されると何が起こるのか

FADルールは外国の親会社の傘下にあるカナダ法人がさらに別の国にある子会社へ投資する場合に問題となる制度だ。

外国親会社
  ↓
カナダ法人
  ↓
外国子会社

test

いわゆるサンドイッチ・ストラクチャー

このような構造において、カナダ法人が外国子会社へ出資や貸付を行うと、その投資額があたかもカナダ法人から外国親会社へ配当されたかのように扱われる場合がある。その結果、カナダで源泉税が発生する可能性がある。なお、一定の要件を満たせば日加租税条約によって源泉税率が軽減される。

カナダ政府は、外国親会社がカナダ法人を経由して外国子会社へ投資することにより、カナダの税制上のメリットを得ることを防ぐ目的でこのような構造を規制している。

FADルールと聞くと株式投資だけをイメージしがちだが、実際には貸付やその他一定の資金供与も対象となる。そのため、外国子会社設立時の出資だけでなく、その後の運転資金貸付や設備投資資金の融資についても注意が必要だ。

PUC減額

実務上は、みなし配当課税を回避するため、PUC (Paid-Up Capital) Reduction Electionの利用を検討することになる。

PUCとは、株主がカナダ法人へ拠出した資本金のうち、税法上認識される払込資本のことだ。FADルールでは、みなし配当を発生させる代わりに外国親会社にひも付くカナダ法人のPUCを減額することで対応できる場合がある。

ただし、PUCを減額すると将来カナダ法人から外国親会社へ源泉税なしで資金を返還できる余地が減少する。そのため、PUC減額選択は単なる課税回避手段ではなく、将来の資金還流計画も含めて検討すべき論点だ。

FADルールの適用除外

ここでは主な適用除外条項を2つ紹介する。重要な結論として、資本出資の場合、実務上使える選択肢は限定される。

1. PLOI(Pertinent Loan or Indebtedness)

一定の貸付については、PLOIを選択することでFADルールによるみなし配当やPUC減額の対象から外せる場合がある。この制度は外国親会社とカナダ法人とが共同で手続きを行う必要がある。

PLOIは、外国子会社への資金提供が実質的に資本出資ではなく、貸付として管理される場合に検討される制度だ。選択は一定の関係者により行う必要があり、形式的な契約書だけでなく、返済条件や利率、実際の運用なども重要となる。

また、PLOIを選択した場合、税法上定められた利率に基づいてカナダ法人側で利息収入を認識しなければならない。そのため、貸付であればPLOIが常に有利になるわけではなく、PUC減額選択との比較検討が必要だ。

2. Business Activities Exception

外国子会社への投資が単なる資本移転ではなく、カナダ法人の事業活動と密接に関連している場合にはFADルールの適用から外れる。

ところが適用要件が非常に厳しく、実務上はほとんど利用されていない。

例えば、

・誰が投資判断を行ったのか

・カナダの経営陣が主導しているか

・外国子会社の業績がカナダ側経営陣の評価や報酬に反映されているか

などの要件を満たさなければならない。

税務調査で否認された場合のリスクも大きいため、実務上はPUC減額選択かPLOI選択による対応が一般的だ。

まとめ

FADルールを踏まえると、日本企業が北米展開を検討する際、「まずカナダに子会社を設立し、その後米国へ進出する」という順番が必ずしも最適というわけではない。将来の北米展開を見据えたグループ構成を最初に検討することで、後から不要な税務上の論点を回避できる場合もある。

北米進出では会社設立や資金調達の方法だけでなく、その後のグループ再編や資金還流まで見据えたストラクチャー設計にしたい。FADルールはその重要性を示す代表的な制度の一つと言えるだろう。

ーーー

2026年7月4日

ニュース一覧へ戻る

keyboard_arrow_right