ワークフローのない環境で

事業会社に転職したときに「ワークフローに回しといて」と言われて、何のことだかわからなかったことがある。もちろん「稟議・決裁システムで回覧・承認にかけておいて」ということだが、日本独特の言い回しだろう。

ワークフローは関係者への根回しを重視する日本の企業文化の中で生み出されたシステムだと思うが、昨今はオンラインでワークフローが完結することもあって、全員が集まらなくても情報共有や意見収集が可能になる便利な仕組みだ。

ところが、日系企業を除けばカナダや米国でワークフローを導入している例を耳にすることはあまりない。北米企業では基本的に申請者も承認者も1人なので、そのようなツールの必要性を感じないのかもしれない。代わりに、特に中小企業では申請・承認がメールで行われていることが多い。

このメール方式を採用している会社に入ると、過去の経緯を把握するのに時間がかかる。例えば子会社への融資を検討する際、以前に融資をしたことがあるならそのときに交わされたメールを読みたい。生成AIの登場によって以前より効率的にメールの情報を把握できるようになったが、細部は原文を当たらなければならず、複数のメールを行ったり来たりするのは手間だ。日本から海外に駐在して経験した人もいるのではないだろうか。

こういう状況で私は、承認を得たいアクションの内容や根拠を2ページほどの文書にまとめ、関係者と理解をすり合わせ、検討すべきリスクの抜け漏れを確かめてから決裁を仰ぐようにしている。アマゾンの6ページメモの運用から、会議の場でメモを読んだり議論したりする部分を除いた簡易版のイメージだ。経験上、アマゾン方式は社員の読み書きのレベルが高くないと実践が難しいと考えているが、これまた生成AIによってわかりやすい文章を書くハードルが下がっていることから、ある程度柔らかく運用すれば使い勝手が良いとみている。

日本独特の企業文化だと言われている根回しだが、カナダ・米国でも全くないわけではない。何かを決めてしまう前にキーパーソンの合意を事前に得たり、少なくとも情報を共有しておくことは北米でも欠かせない。

日本のワークフローがそのまま海外でも使えるとは限らないが、「後から読める形で意思決定の過程を残す」という発想には今でも学ぶところがあるように思う。

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2026年5月3日

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